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私の愛読書「 北溟館物語」または「荒涼館」(ディケンズ)3 大坪家の一泊と翌朝の冒険 (続き)翌朝、朝食前に三人は近所の散歩に出かけた。 裁判所の横に公園があり、そこで一人の老婆に出会う。Miss Flite(お糸ばあさん)といい、何かの訴訟を抱えて裁判所に日参している名物ばあさんだ。 お糸は三人が陣野氏の後見を受けていることを知り三人を手招きして、近所の自分の下宿に案内した。 お糸が足を止めたのは狭い裏町の古道具屋の前だった。 階段をのぼりかけると店主の老人に呼び止められた。Clook(曲木)といい、陣野裁判に通じているので近所では「裁判長閣下」のあだ名で通っている。 カーストン(軽部)、クレア(呉)、デッドロック(稲毛)などの名前を挙げて見せる。 店の中はたくさんの書類の束やがらくたでいっぱいだ。 お糸ばあさんの部屋にたくさん小鳥を飼われており裁判が終わったらみんな放してやるという。 狭い階段を下りながら二階のドアのところで声をひそめて 「この部屋にはもうひとり下宿人がいるんですよ。筆耕をしている男で、いったいお金があるのかね 」といった。 階段を下りたところで曲木老人がエスター呼び止め、壁に「 J 」と書いて見せた。 「この字読めますかい?」といいながら、続いて A … R … N …(Jarndyce)と書いて意味ありげに笑った。 右の挿絵はこの場面である。タイトルは [THE LORD CHANCELLER COPIES FROM MEMORY] (裁判長閣下、覚えている字を書く) 曲木老人は字が読めないが、自分の店にある反故の山の中に重要書類があるらしいとみて、独学で綴りの勉強をしているのだ 散歩から帰り、朝食を済ませた一行はジェリビー家の人々に別れを告げ、鳩津(ハートフォード)州の北溟館に向かった。 (以下次号) |
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