鳥瞰図のたのしみ

地図工房トンビの目のホームページ

私の愛読書

 「 北溟館物語」または「荒涼館」(ディケンズ)

4 探索と遭遇 (3)

 タルキングホーンは別のルートで不識庵が軍隊にいたことや、彼に仕えていた部下が健在であることを探り当て、筆跡の照合をはかるなど、じりじりと男爵夫人の過去に迫った。

ガッピーが証拠の手紙が焼けてしまったことを知らせに来たときに、タルキングホーン弁護士と鉢合わせしてしまい、ガッピーは自分の行動を悟られたら大変だと、手を引くことにする。

夫人にとっては、一つの懸念がなくなったとはいえ、タルキングホーンによってやがて自分の過去が暴かれる時が来ると覚悟した。
もうひとつ気懸かりなことがあった。エスターが重い病気にかかっていることを知ったのだ。 北溟館の近くまでいきながら公然と見舞うこともできなかった。

やがて病が癒えたエスターはボイソーンの招きでリンカーン州におもむく。チェスニーウォルドの庭園の緑陰で休んでいると、そこに男爵夫人が急ぎ足でやって来た。
「エスターさん、お驚きになって?まだすっかりお丈夫にならないのでしょう?
長い間御病気でしたってね…」
このエスターと母の出会いの場面が、「 北溟館物語」の口絵にえがかれている。
絵の下にある文章
<夫人は私の足もとに跪いて「あゝ、私のエスター、私はあなたの情けない母なのです。
あなたを棄てた薄倖な母なのです…」と泪とともに掻き口説くのでした。>

以下次号
 
お問い合わせ